はじめに
昨今ではインターネット回線として10Gbpsの光回線を用意するプロバイダーも増加しています。
自宅サーバーにおいても、この10Gbpsの回線を活かしたいと考えている方も多いでしょう。
ただ、10Gのルーターとなると価格も高く対象機種も絞られてしまいます。
ましてや、日本のインターネット環境では諸事情でNTT系の回線はMAP-EやDS-Liteなどの少々特殊な方式を使用するプロバイダーが増えており、一筋縄ではいかないのが現状です。
ちょうど私も何か10Gルーターを導入したいと考えていたため、まとめてみることとしました。
なお、WAN10G/LAN10Gの2系統の10Gを使用できることを条件とします。片方のみ10Gの機種は除きます。
接続方式
まずインターネットの接続方式の話が必要です。
接続方式には PPPoE と IPoE があります。この記事を読んでいるような人には今更説明はしません。
ただ、プロバイダーによってプロトコルの対応方針が異なります。
中京圏のコミュファ光や、関西圏のeo光など電力系プロバイダーはPPPoEに対応しており使用できます。
またオフィス向けの光回線などもPPPoEで接続となっていることが多いです。
NURO bizなどがそうです。
一方で、NTTのNGN回線を使用してる10G回線はIPoE方式となり、インターネットの出口にVNE事業者を経由するため次のいずれかの方式となっていることが多いです。
・MAP-E v6プラス (JPIX
・DS-Lite Transix (IIJ)
・DS-Lite XPass (アルテリア)
これらの方式はNTTの巨大なバックボーンを使用しているため回線品質は高いのですが、特殊なため使用できるルーターが少ない問題があります。
これらの回線以外の選択肢が選べるのであれば、まず PPPoE を使用できる回線を探すことを勧めます。
機種
一般家庭向け
家庭用の 10G ルーターはお安くなってはいるのですが、自宅サーバー向けには使用しない方が良いです。
自宅サーバーの用途にもよりますが、特に外部の不特定多数からのアクセスが多い場合にNATテーブルが不足する状況が発生しやすく、サービスに影響が発生します。
通常、一般家庭向けルーターのNATテーブルは数千件程度にとどまります。
ただ、ユーザーが少数の場合は家庭向けのバッファロー等のルーターでも賄うことができます。
あまりサービス影響を考えないのであればいこちらでも問題ないでしょう。

企業向け
実際には企業向け(中小企業向け)のルーターから選ぶことになります。
YAMAHA RTX1300
第一候補はYAMAHAのRTX1300です。
SNS等でも自宅サーバー界隈で非常に人気が高い機種です。この機種を買っておけばまず間違いがありません。
しかし、お値段もとんでもなく高いです。

ただ、enひかりを契約して1年以上契約する前提でかなり安く購入できます。
それでも、税込み14万円ほどのためハードルの高い製品ではあります。

enひかり YAMAHA RTX1300
https://enhikari.jp/crosscampaign.html
NEC UNIVERGE IX2310
2つ目は NEC の UNIVERGE IX2310 です。
RTX1300 の正当な対抗馬と言えます。
しかしながら、価格はRTX1300よりも高く、2021年発売のため中古もほぼ出回っていません。
どうしても NEC を選びたい理由が無ければ選択肢に入らないでしょう。

UNIVERGE IX2310 (公式)
https://jpn.nec.com/univerge/ix/Info/ix2310.html
UNIVERGE IX2310 (価格com)
https://kakaku.com/item/K0001488084/
NEC UNIVERGE IX3315
NECからはもう一つあり、それがIX3315です。
IX3315 は IX2310 より上位機種で新品価格も100万円を超えるのですが、2016年発売のため中古が少々出回っています。
流通量・出品数はあまり多くありませんが、2026年7月の相場としては7-10万円台ほどで購入可能となっています。
そのため、価格と入手性の面で非常に有力な候補となります。
デメリットはサイズが大きく消費電力も比較的高めな点です。

UNIVERGE IX3315 (公式)
https://jpn.nec.com/univerge/ix/Info/ix3315.html
FITELnet F310
F310は、古河電気工業の FITELnet シリーズの10G対応モデルです。
新品価格は他社同様で、シェアが低いため中古はほぼありません。
あえて購入する優位性は無いのですが、MAP-EやDS-Liteなど日本環境に対応しているため、紹介だけしておきます。

FITELnet F310
https://www.furukawaelectric.com/fitelnet/product/f310/
TP-Link ER8411
TP-Link からも ER8411 という 10Gルーターが発売されています。
同時セッション数も 230万件となかなかの性能を誇ります。

ただ、この製品は IPoE 環境に向いていません。
デフォルトでは対応していないため、別途用意されている対応ファームを適用する必要があります。
しかしながら、対応ファームには次のような制限があります。
・MAP-E/DS-Liteにおける固定アドレスはサポートしていない
・NAT/VPN/DDNS/IGMPプロキシ/UPnP/OSPF を使用できない
・Omada Controllerで管理できない
・通常のファームウェアバージョンアップを使用できない(推測)
特に固定IP使用不可・NAT使用不可の制限が厳しく、サーバー運用が厳しくなります。
PPPoE で使用する(法人回線や電力系など)のであれば価格が安くスペックが高いためお勧めです。
TP-Link ER8411 Omada VPNルーター avec 10Gポート
https://amzn.to/4wBpNkJ
ER8411 (TP-Link公式)
https://www.omadanetworks.com/jp/business-networking/omada-router-wired-router/er8411/
ハードウェア型及びソフトウェア型Omada Controller IPoEサポートファームウェアアップグレードに関して
https://support.omadanetworks.com/jp/document/26615/
ER8411 IPoE対応ファームウェア適用方法
https://www.tp-link.com/jp/support/faq/4404/
UniFi Cloud Gateway Fiber (UCG-Fiber)
UniFi からも発売されており、小型のミニPCのようなモデル「Cloud Gateway Fiber」が約5万円と他社に比べて格安です。
ただし、こちらもTP-Linkと似た状況で日本のIPoE対応が不十分です。固定IPオプションなどは使用できません。
TP-Linkと違いデフォルトのファームウェアでMAP-EやDS-Liteに対応している点は良いところです。
なお、この形状から予想できる通りスペックは低めのようで、公式からパフォーマンス情報も公開が少ないため有志が調べたところによるとTP-Linkの1/10以下といった結果のようです。

Cloud Gateway Fiber
https://jp.store.ui.com/jp/ja/category/cloud-gateways-compact/collections/cloud-gateway-fiber/products/ucg-fiber
UniFi Dream Machine (Pro/Pro Max/Special Edition)
UniFi からはもう一つあり、ラックマウント型の「Dream Machine 」というシリーズがあります。
UCG-Fiber よりも前の発売のため、IPS性能などはFiberに劣りますが、一応プロ仕様となっているようです。

Dream Machine Pro
https://jp.store.ui.com/jp/ja/category/cloud-gateways-large-scale/products/udm-pro
自作
これら紹介したメーカー品の他に、OPNsense/pfSense/OpenWRT/VyOS などのOSSのルーターOSを入れて使用する方法もあります。
自作PCには専用のスイッチングを担うようなチップが無いものの、強力なCPUパワーで補ったり、NATテーブルの問題もメモリを多く乗せることで大規模なネットワークにも耐えられる設計にできるメリットがあります。
10GのNICもPCI-E向けのものは2ポート1万円程度で購入できるため比較的安く仕上げることができます。
OSSルーターを乗せる土台としてはいくつかパターンがあるため紹介しておきます。
Topton ミニPC
Aliexpress等で購入できる Topton というメーカーのミニPCを使用する方法があります。
他にもミニPCメーカーはあるのですが、Topton は10Gポートを2つと2.5Gポートを複数持つ、まさにルーターに最適なミニPCを販売しています。
CPUの種類などによっていくつかモデルがあります。
N150:


N300:


<参考>
TOPTONの産業用ミニPCで10Gbps対応ルーターを自作! Proxmox VE+OpenWrtを入れてフレッツ 光クロス回線で使う
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/shimizu/2017994.html
MinisForum MS-01 / MS-A2
ミニPCの中では MinisForum MS-01 / MS-A2 なども人気です。
正直ルーターとしては CPU がオーバースペックではありますが、セキュリティ機能をふんだんに使用したい場合や高い性能を引き出すのであればこれ一択でしょう。
本体他にメモリ8GB・SSD128GB・NICなどを入れて10万円ほどになります。

Minisforum MS-A2
https://www.minisforum.jp/products/ms-a2
小型PC
PCメーカーの小型PCにもPCI-Eスロットが1つ付いているモデルがあります。
例えば、Lenovo ThinkCentre Tiny シリーズなどです。

この PCI-E スロットに10G NICカードを追加してルーターにする方法もあります。
だいたい本体に1~2万円、NICに約1万円ですので、合計約3万円で構築できます。

ただ、ブラケットの形状が特殊でロープロファイルだけでは付けられないため、カットするか専用のブラケットを購入する必要があります。
また、ソケットの長さにも制限があるため注意が必要です。SFP+のNICは奥行きが長い製品も多いため入らない場合があります。小さい筐体に収めるために少々手間がかかります。

<参考>
Thinkcentre m720qに10GBファイバーカードを搭載した場合に使うルーターOSは何ですか。
https://www.reddit.com/r/homelab/comments/1ok8swe/what_router_operating_system_to_use_on/?tl=ja
RTX1300が高いのでopenWRTで10Gbps用ルータを自作した
https://qiita.com/applesorce/items/b16b9344a41619943c28
SFF PC (small form factor)
最後に、法人の払い下げ品として広く出回っているSFF PCを使用する方法があります。
流通量が多く、性能のわりに価格も安い傾向にあり、本体に約1万円・NICに約1万円でだいたい合計2万円ほどで構築できます。
ロープロファイルのブラケットをそのまま使用できるのも良い点です。
拡張スロットも複数搭載している場合が多いため、複数スロットを使えばルーターやスイッチとしても利用できます。
どの方式よりも拡張性があり、コスパも良いというメリットがあります。
ただ、コスパは最も良いですが、ミニPCや1Uのメーカー品と比べると場所を取るというデメリットがあります。

OS別 機能まとめ
OSごとの日本におけるインターネット接続方式等々の対応状況を表にまとめてみました。
日本メーカーである YAMAHA・NECの対応が優秀で、海外メーカーのTP-Link・UniFiは対応状況が充実しておらず、OSSはかなり大変だという状況が見て取れます。
| PPPoE | IPoE MAP-E (v6 Plus) | IPoE DS-Lite (Transix/XPass) | IPoE 固定IP (IPIP) | VRRP | 価格 (税込) | |
| YAMAHA RTX | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 210,000 (新品) |
| NEC UNIVERGE IX | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 80,000 (中古) |
| TP-Link | 〇 | 〇 (特殊FW) | 〇 (特殊FW) | ✕ | ✕ | 63,000 (新品) |
| UniFi | 〇 | 〇(UniFi OS 4.4〜) | 〇 | △(IPIP6手動トンネル) | ✕ | 51,400 (新品) |
| OPNsense | 〇 | ✕ ※1 | ✕ ※1 | ✕ | 〇(CARP) | 30,000 (中古自作) |
| pfSense | 〇 | △ ※2 | △ ※2 | △ ※2 | 〇(CARP) | 30,000 (中古自作) |
| OpenWRT | 〇 | 〇(mapパッケージ)※3 | 〇(ds-liteパッケージ)※3 | 〇 | 〇(keepalived) | 30,000 (中古自作) |
| VyOS | 〇 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 | 30,000 (中古自作) |
※1 使用した例があるが公式は非対応
https://github.com/kawaii-not-kawaii/ds-lite-opnsense
※2 謎の設定ガイドがある
https://www.reddit.com/r/openwrt/comments/1107iyt/for_japan_ntt_users_this_is_the_ipoe_mape_only/?tl=ja
※3 mapパッケージとds-liteパッケージが対応しているようです
opkg install map
opkg install ds-lite
内容に間違いがあればコメントください。
メーカー製機種のスペック比較
メーカー製の機種のうち入手性が高いもののスペックも比較しました。
TP-Linkのコスパが非常に良いです。IX3315も消費電力が高いもののさすがの性能です。
一方でRTX1300は価格が厳しく、UniFi はスペックが非常に低いようです。
| NAT最大 | IPSec | 消費電力 | 価格 (税込) | |
| YAMAHA RTX1300 | 250,000 | 3.8Gbps | 36W | 210,000 (新品) |
| NEC UNIVERGE IX3315 | 500,000 | 5Gbps | 75W | 80,000 (中古) |
| TP-Link ER8411 | 2,300,000 (セッション数) | 3099.4Mbps | 19.12W | 63,000 (新品) |
| UniFi Cloud Gateway Fiber | 100,000 (非公表のため推定) | 150Mbps ※1 | 29.4W | 51,400 (新品) |
まとめ
PPPoE を使用するなら TP-Link ER8411 がおすすめです。
価格も安く、性能も高く、消費電力も低い、文句の付けようがありません。
一方でIPoE環境では固定IPを使用できないため自宅サーバーには向いていません。
使用できる回線がNTT系のIPoEで、MAP-EやDS-Liteに限られる場合は、enひかりを契約してRTX1300、またはIX3315をヤフオクで漁るのが良いでしょう。
どちらかと言えば順当なのはRTX1300です。enひかりは通信量で制限しないと宣言している数少ないプロバイダーであり、通信もVNE事業者を介するため速度も速いと言われています。RTX1300はリセールも高いため、一緒に契約・購入しても、そこまで損は無く自宅サーバー界隈ではスタンダードな構成と言えます。
より安さを求めたり、技術的な挑戦をしたい方や、より高性能なルーターを用意したい場合など、OSSで自作する場合はOpenWRTが良いでしょう。
VyOSもMAP-Eを使用しないのであれば良い選択肢です。VRRPに標準対応しているなど自由度が高く技術的な挑戦として向いています。**sense系はGUIに優れているのですが日本の環境には不向きであることが分かりました。
ご自宅のインターネット環境に合わせて選択してみていただければと思います。
以上、ご参考までの記事でした。
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